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2004.08.14

世界の中心で、愛をさけぶ (第七回)

亜紀と一緒に灰になったのは自分の心だった
そんな人間は生きているのか死んでいるのか・・・

海に入っていった朔太郎は、結局死にきることはできなかった。

生きていると思い知らされただけだった
最低だった

そんな朔太郎に亜紀の声が語りかける。

朔ちゃん
何かを失うことは何かを得ることだって、わかる?

僕は17年間でいったい何を得たんだろうか・・・

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こうして始まった第7話。
夏休みでこの4日間は帰省先の静岡にいた為、Blogの更新もまともにできなかったが、ちょうど帰省先から東京に戻ったタイミングがこの第7話の放送される時間だった。
そのおかげで、今回は始めてビデオではなくオン・エアで見る事ができた。
見終わった直後にこれを書いている。
文字を打ちながらパソコンの画面を見ている目は、涙が乾き始めたばかりだ。

 
亜紀に嘘をついている事に後ろめたさを感じながらも毎日病院へ通う朔。

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亜紀は6割なのか4割なのか
亜紀がこの事実を知ったら・・・
大人の自分でも、同じ境遇に耐えられるかどうか自信がない。
高校生の朔には相当重いに違いない。

だからこそ、亜紀の父から聞いて真実を知った朔の父が、「嘘をつくのも大変だろう」と朔に語りかける場面では、その優しさが心にしみた。

しかし同じ白血病で入院している青年との出会いをきっかけに、自分の病気に疑いを感じていた亜紀が、そんな朔をだましてついに白血病であることを知ってしまう。

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呆然とする朔に「ありがとう」という亜紀の表情が切ない。

そのことを悔いる朔に「本当は俺がやるべき事だったんだ、ありがとな、辛かったろう」と、朔の辛さを理解してあげられる亜紀の父の強さに胸を打たれる。

「朔ちゃん、よく合わせてくれたよね。」
白血病であることを知っていながら、修学旅行用のパスポート写真を撮るという亜紀の頼みをきき、亜紀に合わせてくれた朔の優しさに感謝しながらも、そのファイルを床に投げつける亜紀。
亜紀の、どこにもぶつけることのできない怒り、悔しさが伝わってくる。

しかしそんな様子を全く見せることなく、外出許可が出た亜紀は元気な顔で登校する。

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ウォークマンから流れる「先ずはコロッケパンが食べたいぞよ」との声に、朔と同様うきうきしてしまう。

しかし「学級委員!」と呼ばれてつい立ち上がってしまう亜紀。
少しずつ変わっているクラスに戸惑っている亜紀を気遣い、学校から連れ出す朔の優しさ。

そこから続く、つかの間の楽しい時間がとても微笑ましい。

手を繋ぐ朔と亜紀。
たこ焼き屋で、「朔ちゃんっていつも何やってるの?」という亜紀に「お見舞い」と屈託なく答える朔。
朔の膝枕で「ここで告白したんだよね」とその日の事を思い返す亜紀。
そして「最悪、私一回も好きって言われてない」と朔に詰め寄る亜紀、逃げ腰の朔。
朔の家で洗濯物を畳むやりとり。
割烹着姿で朔の母と料理をする亜紀。
それを微笑ましそうに眺める朔と朔の父。

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こういうシーンをずっと見ていたい。
亜紀が病気でさえなければ、この先もずっとこんな場面が見られるはずなのに・・・
そう思わずにはいられないほど和やかな場面が続き、ニヤケ顔で画面を見続ける自分。

しかし、そんな風にニヤケ顔で見ていられたのもここまでだった。

朔の家で夕食をするという亜紀からの電話に、がっかりした様子で鍋をつつく亜紀の父。
そんな夫に「また次があるわよ。あるわよね・・・」と語る亜紀の母。
「当たり前じゃないか」という亜紀の父のセリフとその表情に胸が詰まり、鼻がツーンとしてくる。

場面は朔の家の食事風景に変わり、朔や亜紀の名前の由来の話題から、亜紀の病気の話題へ。
亜紀が言う。
「ホントのこと言っていいですか」
「私、白血病なんです」

うつむいて聞き返す朔の母。
「白血病ってあれかい、あの・・・」
答える亜紀。
「はい」

見上げた朔の母の顔に流れる涙を見た瞬間、こちらの目の前も涙でにじんでしまった。
それからはもう涙が止まらない。

「何んで、何んでだよ、何んであんたがなんなきゃいけないんだよ」
「何んで仏さん、そんな意地悪するのかねぇ、ねぇ!」
「だけど大丈夫だからね!そんないい名前もらって、大丈夫だからね!」

大島さと子の迫真の演技に圧倒された。
重い演技が要求される大人たちの中で、唯一生命力を持った役どころだからこそのシーンだったと思う。
亜紀や朔に対して「生きてるんだよ!」という思いを見事に表現していたと感じる。

亜紀もまた、そんな朔の母の姿に感動する。
「そのまんま受け止めてくれたの、なんかすごい嬉しかった」
「飾らないお母さんと、呑気なお父さんと、だから朔ちゃんが生まれたんだね。」

そして続く言葉と、朔の思いにまた胸が詰まる。

「今度はもうちょっと元気になって、朔ちゃんちの朝ご飯も食べてみたいな。それが今の夢かな。」

世界を飛び回りたいと言っていた亜紀が
ウチに来ることが夢だと語る
たぶん、現実を受け入れていくとはこういう事なのだ

だけどそれすら心のどこかで声がする
そんな未来はあるのだろうか・・・

その心の声が聞こえたように答える亜紀の言葉が切ない。

「大丈夫だよ朔ちゃん、夜は必ず明けるんだよ。」

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現実を受け入れ、完治を目指して治療を受けようと決意した亜紀。
しかし同じ白血病で入院していた青年が死んだ事を知り、絶望した亜紀は病院を抜け出し海に入っていく。

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駆けつけて制止しようとする朔に投げつける言葉の一つ一つが痛い。

「今死んだって同じじゃない!」
「どうせ死ぬんだったら、なんで辛い治療を受けなければいけないの!」

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随分昔になるが、足の手術の為に、手術前の検査で骨髄から血液を取られた事がある。
大人になった今でも、あれだけは、あの痛みだけは二度と経験したくないと思う。
辛い入院生活を知っている者ならば、ましてその辛い時間を、死と向き合いながら過ごさねばならないとしたら、亜紀の言動を安易に責めることはできない。

「みんな卒業して、社会に出て、結婚して、
そういうのを横目で見ながら暮らすんだよ
羨ましがって、ひがんで、可愛そうねって言われて
いい事なんか何んにもないのに、みじめにいい事探して
私、そうやって暮らすんだよ、一生だよ
なんで私だけ、そんな目に遭わなきゃいけないの?」

不自由な足のせいで、入院・手術・リハビリ・退院を繰り返した事があるだけに、その辛さも充分知っている。
そして、そんな思いを繰り返しても、どうやっても普通の人と同じ生活はできないという絶望感も何度となく味わっても来た。
だから、亜紀が叫ぶセリフの一つ一つが痛いほどわかる。

「なぜ悪い事ばかりしか考えられない?」と、ありきたりな事しか言えないもどかしい朔。
当然だ。
17歳の高校生なのだ。
そんな朔に対して、亜紀の言葉が続く。

「朔ちゃんだって思ってるくせに
私が死ぬって思ってるくせに」

答える朔の必死の表情と、その言葉が胸を打つ。

「そうだよ、思ってるよ、思っちゃうよ
だけど、俺の知ってる広瀬亜紀は、
鼻血出ても保健室行かないんだよ 
雨の日でも一人で弔辞読むんだよ
白血病でも自己ベスト更新するんだよ」

「誰よりも負けず嫌いで、
上昇志向の固まりのような父親と
強がりで優しい母親から生まれて
恐竜みたいに逞しく育てって言われて
だから俺は広瀬亜紀を信じる
絶対に裏切んなよ」

言い聞かせていた
亜紀に言いながら
僕は自分に言い聞かせていた

くしゃくしゃな顔で「はい、はい」と言う亜紀の声が、そしてその姿がもう、見ていてたまらなく切ない。
目に溜まっていた涙が際限なく落ちてくる。
たかがドラマなのに・・・。
わかっていても涙を止められない。

ラストは決まっていることだろうけど、変えられないのか?
亜紀は死なずに、朔と幸せに生きられるラストにしちゃだめなのか?
そんな理不尽な思いを抱かずにいられない。

何かを失うことは何かを得ることだと、亜紀はそう言ったんだ

泣きながら一樹を抱きしめる朔太郎を見ながら、変えられない結末ならば、せめて得られたもの、これから得られるものに、早く気付かせて上げてほしいと強く願った。

しかし朔も言った「信じることは戦いだった」の言葉通り、次回以降もまた辛いシーンが続きそうだ。
残り4話、あと何回泣かされるのだろう・・・。


初めてオン・エアで見て、気付いたことが一つある。
それはCMの入れ方だ。
ビデオで見ているときには気付かなかったが、CMの入れ方が絶妙だと感じる。
後半、一気に見せるところでは全くCMが入っていない。
そうした配慮も、このドラマに感動する人が多い理由の一つなのだろうなと、改めて感心させられた。

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コメント

ども、&お帰りなさいなのだ。

昨夜は、サクの家での夕食シーンに胸がうたれたのだ。
サクの両親って暖かいよねーーー。

最近のイヤーなニュースが多い中で、人間が失ってしまった優しさがあちこちにちりばめられていたと思うのだ。

そして、アキの両親もやっと病気を受け止めてこれからのアキとサクをそっと見守って行こうって感じでこれも心が洗われるのだ。

白血病で入院していた青年、治療を断っていたってお母さんが言っていたのだ。
自分の運命を素直に受け入れてしまうことって、勇気以上の何ていうか・・・悟りみたいなものを感じるのだ。

少しでも治る可能性にかけてみるって方法と、限られた命を燃やし尽きるって方法とが究極の選択に思えたシーンだったのだ。

Gai さん同様、原作や映画でもない、TVだけのハッピーエンドは無理なのかーと思うのだ。

投稿: はんぎょどん | 2004.08.14 06:07 午後

はんぎょどんさん、どもです。
考えさせられることも多いドラマですね。

原作や映画のストーリーを知らないけど、それらでは朔や亜紀を取り巻く人々の事はあまり深くは触れられていないらしくて、ドラマではそういった周囲の人々もしっかり描きたいというふうにプロデューサーが語っていたそうです。

確かにそういった周囲の人々の言動が、より一層感動的なものにしていますよね。

結末はきっと変えられないのでしょうけど、ただ悲しいだけの終わり方にならないよう願っています。

投稿: Gai | 2004.08.15 03:13 午前

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