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2004.09.10

白黒つけたぜ! ~DVD「ゼブラーマン」

意外や意外、なかなか面白い作品でした。

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特に出だしから中盤にかけては文句無くはまります。
TVに映る最近のヒーロー番組に「なっちゃいねぇ」とつぶやきながら、ミシンでコスチュームを作り、夜な夜な鏡の前で着てみて、決めポーズなんかしてふふふと笑う。

「やっべ~…浅野さんに見せたい」
このセリフが前半におけるこの映画の全てといってもいいかもしれません。
仮面ライダー1号2号V3まであたりをリアルタイムで見ていた世代なら、きっと更に楽しめると思います。


哀川翔扮する主人公は、生徒にもバカにされる小学校のダメ教師。
家に帰れば妻は他の男と不倫、娘は援助交際、息子は学校でイジメに合っているという状況で、明らかに家庭は崩壊しているのに、自分はそれを認めたくない。

そんな彼の唯一の楽しみが、少年時代にTVで観たヒーロー『ゼブラーマン』の衣装を製作して自分で着ること。

この『ゼブラーマン』というTV番組は、もちろん架空のヒーローものなのだが、実に良く設定されていて、この設定が物語全体を引っ張っているといえます。

そのポイントの一つが「ゼブラーマンは変身しない、自分の力で戦うんだ」という、繰り返し語られるこのセリフ。

ゼブラーマンは決して無敵のヒーローではない。
苦労しながらも、痛い思いをしながらも、徐々に強いヒーローに変貌していく。
哀川翔扮する主人公もまた、親として、そして教師として、同じように成長していく課程を描いている展開になっています。

最初はダメ親父、ダメ教師の主人公が、涙ぐましい努力をしてボロボロになりながら、ヒーローの役目を果たそうと頑張るその姿には熱いものを感じさせられます。
しかしそれ以上に面白いのが、周囲の冷ややかな視線あり、ほんの眼と鼻の先にある「自販機」まで屋根づたいでの大冒険あり、逃げていく放火魔を画面外で「ゼブラーバックキーック!」とぼそっと呟きながら倒したりと、爆笑に次ぐ爆笑。

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そんな主人公を取り巻く脇役たちもなかなか面白い。
渡部篤郎、鈴木京香、内村光良、大杉漣といった役者たちが、実にいい味を添えています。

渡部篤郎の演じる及川という防衛庁の調査官は、いってみれば現実とフィクションの間を行ったり来たりするような役回り。

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舞台となる架空の町「八千代区」には宇宙人がいて、世界征服の拠点を築いている怪情報を入手した防衛庁は「特殊機密調査部」を設立する。
調査を任命された及川(渡部篤郎)と瀬川、二人は厳命を帯びる。
「くれぐれも口外しないように」と釘を刺す上官に、「言いませんよ、バカだと思われるもん」とあきれて答える及川には爆笑させられ、まさに渡部篤郎のキャラクターならではといった感じ。

鈴木京香が演じるのは主人公が憧れる女性で、『ゼブラーマン』に詳しい「浅野くん」の母親。

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主人公の「夢」の中では『ゼブラナース』という彼をサポートする存在としても登場するのだが、そのコスチュームの胸の谷間にはドキっとさせられ、鈴木京香が良くこの役を引き受けたなと、違う意味でも感心させられたり・・・。

内村光良は主人公の同僚の先生役。

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主人公と繁華街をパトロール中、「変質者なんてゆるさないっ」と内村が力んで、コスプレが病みつきになっている主人公が、「ばれたらクビだ」と夜うなされる。
「ばれたらクビだ」「ばれたらクビだ」と内村と一緒になって先生たちが連呼するシーンが面白い。

大杉漣は、主人公がいつも叱られている教頭役なのだが、実は・・・
物語の後半を引っ張る大きな役どころとなる展開がなかなか凝っています。

そんな感じで抱腹絶倒、勢いある前半は文句なしに面白いのだけど、それに比較すると中盤のダラダラさ加減、後半の荒唐無稽さ加減が、とてもとても残念。

多くの原因は、なぜ教頭の脚本に沿って現実も進行したのか? ゼブラーマンがヒーローとしての能力を発揮し出す原因は何だったのか? なぜ鈴木京香は正体に気付いたのか?など、説明不足、つまり脚本のツメの甘さにあると思うのですが、それ以上に最大の失敗と思える要因が二つあると感じます。

一つは宇宙人をCGアニメにしてしまった点。
せっかく水木一郎アニキの主題歌や、柄本明のカニ男とか、基本的には仮面ライダーチックなところがこの映画の良さなのに、マーズアタックの火星人のようなマンガチックなCG宇宙人は、どうみても違和感があります。
ここは是非、往年のヒーローもののボスのようなスタイルで描いて欲しかった。

そしてもう一つは『ゼブラーマン』の最後の目標を「飛ぶこと」にしてしまった点。
「信じれば夢は叶う」、「信じるということは努力すること」といった部分をテーマとしたかったと思うのですが、いくらなんでも「飛ぶ」というのは・・・
その結果、ラストの戦いはCGの宇宙人とも相まって、全くマンガのような展開になってしまっています。
だから本来なら「感動的なラスト」も、自分の中にどこか冷めた部分が残ってしまっていて感動に浸りきれない。

せっかくの「ゼブラーマンは変身しない、自分の力で戦うんだ」、「苦労しながら、痛い思いをしながら、徐々に強いヒーローに変貌」といった「ゼブラーマン」ならではの良さが、この一点で全て台無しになってしまっています。

「ゼブラーマン」は「等身大の変身もののヒーロー」であり、アニメのヒーローでも、またウルトラマンのような巨大ヒーロー、宇宙から来たヒーローでも無いというところが大きなポイントであり、その点をもっと大事にして欲しかったと感じます。

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しかしそれでも、そんな後半でも、キラリと光るシーンがいくつもあります。
特に決戦に備えてボロボロになりながら自分を鍛える哀川と渡部がベンチで会話するシーンは秀逸。
「あんたヒーローだろ、チャッチャッと地球救っちゃってよ・・・」
渡部のこのセリフには、言葉以上の何かを感じさせられ、強く印象に残ります。

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渡部は夢見ることを忘れた、あるいは諦めてしまった男たちの代表、つまり見ている私たちの側の存在である点が、不思議と彼に感させられる原因なのかもしれません。

だからこそそんな彼が、クライマックスでバイクに乗って現れたゼブラーマンに「先生やるねえ」と言って非常線を通してあげるシーンでは、男性ならきっと喝采を送りたくなるでしょう。

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恐らく続編が製作されることは無いのでしょうが、今回の失敗要素が改善された続編を見てみたいなぁと、そんな風に感じさせられる作品でした。

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寒いです。とっても寒いです、ハイ。ただいまお部屋の温度20度を切りました。エアコンを、と思ったらリモコンがいません。何処に行っちゃったんでしょう?ホットカーペッ... [続きを読む]

受信: 2004.10.14 10:54 午後

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