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2004.10.23

人はなぜ戦うのか?  ~DVD「CASSHERN」

10/23が予約していたDVD「CASSHERN」の発売日であるが、1日早く届いた。

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5月に劇場公開された時に映画を見て、その時にレビューも書いたのだけど、今回発売されたDVDを見て、そのレビューも書いてみようかなと思った理由はいくつかある。

一つにはやはり、先日レビューを書いた映画「デビルマン」を見た直後という事もある。
しかし、その点は後半に書こう。

もう一つ、劇場公開時にはよくわからなかった各シーンの持つ意味が、DVDを見て改めて理解できたところが多かったからだ。

 
>恐らくこの映画は、少なくともそのストーリーに関しては、最初の一回目の鑑賞
>だけではキツイ。きっともう一度繰り返して見た時には、もっと一つ一つのシーン
>をより深く理解できるのかもしれない。

と、過去のレビューで書いた通りだった。
いや、改めて見てみても、実に複雑な作られた方がされていると感じる。

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自分の当時のレビューを読み返してみても、Gaiはこの映画をそれなりに評価していて、かなり気に入っていた様子がうかがえる。

しかし、公開当時この作品は、世間からはあまり良くない評価も聞かれていた。
CGに関するものも多かったが、やはりストーリーの組み立て方、わかりにくさに対する指摘も多かったように思う。

確かに、映像や音楽のパワーと、見事な役者さんたちの演技で救われてはいるものの、ストーリーのわかりにくさは否定できない。

>最後にはしっかり伏線の整理などもされてはいるのだが、途中の「え?どういう
>こと?」的なストーリー展開部分が結構長いため、スッキリしないまま引っ張られ
>ていく印象を終わり近くまで拭えなかった。

過去のレビューでもそう書いているが、今回、改めて見返してみて、無理もないなとつくづく感じる。

途中だけではない、もう冒頭から時系列を無視したような、さまざまな映像のフラッシュバックが多く、そこに死人の視点で物語が展開したり、不可解な稲妻を模した造形物の落下によってブライキングボス達が誕生するなど、あまりにも飛躍した展開が続くのだ。
初めて見る人がついて行けるワケが無い。

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サグレーが死ぬときに「そういうことか・・・」とつぶやく。
バラシンもまたその最期で「そうだったのか、でも俺は許すよ・・・」とつぶやく。
初めて見た人は、何を言っているのかわからないだろう。

冒頭にミッチー演じる内藤が口にする「オリジナル・ヒューマン」というキーワード・・・
頻繁に挟まれる「第七管区」における悲惨な惨殺シーン。
その「第七管区」で戦い倒れたはずのキャシャーンが、研究所に突き刺さった稲妻状の構造物が崩れ落ちる際にその中から落ちてくる・・・

何もかもが最後まで何の説明もされないまま、見ている側を置き去りに話はどんどん進んで行くのである。
140分を超える長い作品だけに、これは一つ間違えばとても危険なことだろう。
実際、このストレスが悪評を受けた大きな要素にもなっていると思う。

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しかし紀里谷監督は、あえて確信犯的にそれを承知でやってのけているフシがある。
その自信はどこから出てきたのだろうか?
映像・音楽・演技・編集によって、一つ一つのシーンをきっちり仕上げれば、必ず観客は最後までついてきてくれるという確信だったのかもしれない。

編集の仕方も、映画的と言うよりはミュージッククリップのそれに近いものを感じさせる。
まさに映画監督というよりはアーティストなのだろう。
しかし自分の土俵で勝負したという事を考えると、それはそれで正解なのかもしれない。

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では、映画監督としての力量が足りないか?と問われれば、全くそんなことは無い事が、このDVDで見られるメイキングを見てよくわかる。

ベテランの俳優陣が、初監督作品だから、アニメが原作のおとぎ話だからと、軽く捉えている様子は微塵もなく、その監督ぶりや演技に対する取り組みに、敬意をもって応えている様子がとても印象的だ。

紀里谷監督が、この「CASSHERN」を映画化するにあたって、CGに力を置こうとした点は間違いない。
彼が自分の作品でCGを本格的に扱ったのは、おそらく宇多田ヒカルのPVだったと思う。
そこで得た、現在のCG技術の進歩に対する驚きと確信が、この作品を制作するキッカケの一つとなったのではないだろうか。

しかし彼は、この作品の成功のカギが役者の演技と撮影にかかっているという事を、最初から念頭に置いていたと思える。
自らカメラを回し、役者の表情やアクション一つ一つに、執拗なまでのこだわりを持って要求するその姿、またそれに応えようとする役者やスタッフの情熱は、見ていて本当に気持ちいい。

この「監督のイマジネーションの実現」に作品に関わる全ての人たちが、そのエネルギーを一つに集約しようとする熱意こそが、先日の映画「デビルマン」に大きく欠けていた部分なのではないだろうかと思う。

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きっと「デビルマン」においても、監督はじめ一部のスタッフたちは、大いにその情熱を持っていたに違いない。
そうでなければ、たとえあのように酷い作品ではあっても、あそこまでの映画は完成しえなかっただろう。

しかし映画会社、配給会社、制作会社、プロデューサー、予算、時間といった様々なしがらみの中で、妥協や断念を強いられ、その結果あのように中途半端な作品として公開せざるをえなかったのではないだろうか?

まぁ脚本そのものは監督の仕事の領域でもあるし、CGとか役者の演技力とかを別にしても、演出そのものにも首をひねりたくなるシーンが多々あったので、監督自体の力量にも問題を感じるのだが・・・
将来、「デビルマン」のDVDが発売されるのなら、是非メイキングを見せて欲しいと思う。
いったいどうしてあのようになってしまったのか、是非知りたいと思うのだ。

同じように漫画・アニメを原作に持つこの二つの作品は、その作風は全く違うものの、奇しくもテーマ自体は非常に似通っている。

一方は人間の心の中に潜む「魔」とは何かを表現しようとし、一方は争いを繰り返す人間の心の中に巣くう「憎しみの連鎖」を表そうとしている。
そしてそれぞれ、その行き着く先は・・・

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少々脱線してしまったが、話を戻そう。

この「CASSHERN」をこらからビデオやDVDで初めて見る方々は、是非2度見てほしい。
1回目は、その映像と音楽、そして役者さん達の力の入った演技を、そして2回目は紀里谷監督がこの作品で伝えたかったメッセージ、作品のテーマを味わってもらえればと思う。

そしてできればメイキングも。
紀里谷監督の、役者さん達の、そして彼らを影で支えたスタッフたちの情熱と仕事ぶりを見て、もう一度本編を見返した時、また少し違った「CASSHERN」が見えてくると思うのだ。

時間が経って、繰り返し見られて評価されるようになったという作品が、これまでにも少なからずあった。
おそらくこの「CASSHERN」もその一つとなるのではないだろうか。

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コメント

ども、私の所も今日の午前中に到着したのだ。

で、本編以外のメイキング&資料集を見終わったところなのだ。

Gai さんも書かれているが、監督の演技(演出)への情熱は半端じゃないのだ。

そして、現場関係者との「良い作品を作る為への努力を惜しまない」姿勢には、(私よりも年齢的に若い監督に)脱帽したのだ。

そして、未公開シーン(監督の解説付き)を見たとき、
 「上映時間の問題で削除」
 「ストーリーがストレートに解りすぎるので削除」
の2種類があることがわかったのだ。
特に、後者の削除については、監督の「いじわるさ」がしみじみ伝わってきて、「やられた」と思ったのだ。

いっしょに劇場で観た長女も、今回のメイキングを観て
 「前も言ったけど、TVCM は本当に失敗だと思う。
  もっと鉄也とルナを全面に出した、人間ドラマの
  ような印象を出せば、アニメを知らない人にも
  もっと観てもらえたのにね。」
って言っていたのだ。


次回の紀里谷監督には、是非オリジナルの作品を発表してほしいと思うのだ。

投稿: はんぎょどん | 2004.10.23 04:19 午後

>監督の「いじわるさ」がしみじみ伝わってきて

ホント、そういう感じでしたねー。
ギリギリのヒントを残しながら、いかに最後まで真相を引っ張るか、というところに工夫を凝らしていた感じでしたね。

悩める中学生さんも一緒に見たですか。
親子で見られるってイイですね。
紀里谷監督、次はどんな映画を作るのか、楽しみですね。

投稿: Gai | 2004.10.23 08:37 午後

初めまして!!
私もCASSHERNが大好きな一人です。
私もDVDを購入し、じっくりと見ました。

>まさに映画監督というよりはアーティストなのだろう。

この言葉には共感ですね。
だから、抽象的な表現が好きなんでしょう。監督は。
それ故、映画という“娯楽”として見た人には全くウケなかった、って事なんでしょうね。
良い作品なんですけどねぇ…。
TBさせていただきます!!

投稿: ナカユビ | 2004.10.27 12:55 午前

ナカユビさん、コメント&TBありがとうございました。
Blogの記事の方も楽しく読ませて頂きました。
書かれている内容、その通りですね。

さんざんわかりにくい作り方をしておきながら、最後にテーマをセリフで語ってしまっているというところなんかは、悪評を受けても仕方ないかなと思える部分ですし。

それでもやっぱりイイ作品だと思えてしまうというのは、我々もそれなりに「マニア」と呼ばれても仕方のないところなのでしょうかね。

投稿: Gai | 2004.10.27 10:36 午後

私もデビルマンを劇場で見たものです。

「CASSHERN」は間接的にちょっと参加したので評価は甘いかもしれませんが、最初からオリジナルのイメージのみを使いたかったようですね。
でも編集中に超過した制作費を、監督が自腹で払ったのには見直しました。

「CASSHERN2」も製作が決まったようですし、これからの監督の動向に期待しています。

「デビルマン」は…コメントがでないですね。ネットでも様々噂が流れてますが、まあ酷い出来で呆れました。

後は年末の北村龍平監督の「ゴジラ」の出来でしょうか(笑)

投稿: STしん | 2004.10.28 04:27 午前

STしんさん、コメントありがとうございました。

>間接的にちょっと参加したので

すごいですね。
どんな風に関わったのか興味があるところです。

>編集中に超過した制作費を、監督が自腹で払った

これも知りませんでした。
やはりそれほど思い入れがあったという事なんでしょうね。

>「CASSHERN2」も製作が決まったようですし

マジですか!?
それは楽しみ~

「デビルマン」も「2」は無いでしょうが、「真デビルマン」とか「デビルマン改」とか、なんとかなりませんかね^^;
素材としてはもったいないですよね~

「ゴジラ」・・・
今度こそホントに最後なんでしょうか^^;

投稿: Gai | 2004.10.28 10:09 午後

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