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2004.10.04

ルールは破られた、未来は守れるか ~映画「アイ・ロボット」

ご存知「ウィル・スミス」主演。
彼の作品を始めてみたのは「ID4」でしたが、その後「M・I・B」等で一気にブレイクしましたね。

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原作は云わずと知れた「ロボット工学3原則」で有名な「アイザック・アシモフ」の「われはロボット 」・・・となってますが、厳密に言うと「われはロボット」が原作というワケではありません。

Gaiは「アイザック・アシモフ」の「ロボット三原則シリーズ」のファンでしたが、「それらの作品の映画化」と期待して見に行くと、Gaiと同じように裏切られた気持ちになってしまうので注意が必要です。

 
元々はジェフ・ヴィンターという人が売り込み用に書き上げた「ハードワイアード」(コンピューター・ハードウェアに組み込むという意味)と題する、ロボットが容疑者となる殺人事件を描いたSFミステリーの脚本から出発。
その後「デイヴィス・エンタテインメント・カンパニー」がアイザック・アシモフの「われはロボット」の映画化権を取得したのを期に、プロヤス監督は、ヴィンターの脚本にアシモフ作品の要素を追加して「アイ・ロボット」として仕上げました。

アシモフのアイデアやスーザン・カルヴィン博士、アルフレッド・ラニング博士などの主要人物は、ヴィンターが書いた元のミステリー脚本の構成に、すんなりとマッチしたようです。

従って現在、書店に並ぶ「アイ・ロボット」の文庫に“映画原作”の帯がかかっているのは、あくまで宣伝上の配慮で、正確には映画の脚本作成にあたってインスパイアされた“映画原案”のひとつ、ということになります。

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ちなみにロボット工学3原則とは、

一.ロボットは、人間に危害を加えてはならない。
一.前項第一条に反しない限り、ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない。
一.前項第一条、第二条に反しない限り、自己を守らねばならない。

という、ロボットにプログラムされている3つの原則。

Gaiが「われはロボット 」を読んだのはもう20年近く前のこと。
その頃は海外SFに傾倒していた時期で、アシモフやロバート・A・ハインライン、アーサー・C・クラークなどから出発して、ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作などを次々と読みあさっていました。

アシモフの「われはロボット」の細かい内容は殆ど忘れてしまいましたが、<「ロボット三原則」に反して、壊れてるようにしか見えないロボットの行動が、実は三原則を忠実に守っている結果だった>というミステリ的な謎解き部分に、この作品の面白さがあったと思います。

それを解きほぐしていくのが、ロボット心理学者のスーザン・カルヴィン博士。
映画では若い女性として登場しますが、小説の方では「おばあさん」だったと思います。

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一方、映画の方は原作のそういうミステリ的面白さが完全にスポイルされてしまっているような気がします。
根幹となる設定だけ借りてきて、あとは全くのオリジナルと考える方が良いしょう。

ただ、原作の事をあまり考えず、一本のSF映画として見るならば、なかなか面白い作品だと思います。
作品の印象は悪くなく、俳優たちは求められる仕事をしっかりこなしていますし、CGも観客を呼び込めるに十分な魅力となっています。
特にたくさんのロボットが入り乱れるシーン、未来のカーアクションシーンなどは、なかなか見応えがあります。

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舞台は2035年のシカゴですが、映画の冒頭はそんな近未来を全く感じさせずに始まります。
既にここで、周りはハイテクだらけなのにあえて距離を置く主人公を表現しています。
そういった設定によって、見ている側の視点とウィル・スミスの視点がほどよく同じ高さになり、ストーリーの進行をスムーズに追っていける事に繋がっているようにも感じます。
尚、トラウマとも云うべき彼の見る夢は、物語が進む中での重要な伏線になっていますので要注意です。

そしてシカゴの古い町並みで人ごみの雑踏の中を蠢くロボットたち。
きっと本当にそんな時代がきたとしても、スクリーンの中に見えるようなアンバランスな感じになるのしょう。
リアリティあると思います。

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この作品でのロボットのデザインや扱い方にもなかなか感心させられます。
構造的には完全に「ロボット」であって、物理的に表情が変化しているワケではないはずなのに、感情表現がしっかり伝わってきます。

動作やしぐさだけでなく、透明な感じのするデザインを採用したことにより、光の具合で表面だけが見えたり、中が透けて見えたり、また発光色などもうまく利用する事によって、そういった微妙な感情の変化を作り出しているようです。

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これは30年後の未来の話で、果たしてあそこまでのロボットが登場するかという疑問も感じますが、考えてみると今から30年前の人が、今のコンピュータ文化、携帯電話文化を想像できたかというと、わずか30年といっても何が起こるかはわからないという気もしてきます。

ちなみに話は少々脱線しますが、時々電車の中やホームで、ふと周りを見回してみると、そこにいるほとんどの人が携帯電話を手に持ってメールの読み書きをしているという状況に置かれていることに気づくことがあって、そんな時、自分が何かのSFに出てくる管理社会に紛れ込んでしまったような、ちょっと異様な気がしたりする瞬間があります。

それまでの新聞や週刊誌、文庫本が、携帯電話に置き換わっただけという見方もできますが、一様に同じポーズで無言で携帯電話を無心に操作している人々の姿というのは、可笑しさよりも何か怖さのようなものを感じさせられるというのは考え過ぎでしょうかね?

さて、話しを元に戻すと、未来のロボット像というのは、結局はAIがどこまで進化して、どこまで人間に近づけるかということに行き着くのでしょう。

人間の脳は猿からの進化の過程において、複雑で電気的なネットワークを作り上げる事によって「自我の意識」を形成したと言われています。
そう考えると、コンピューターそのものも電気的なネットワークで構成されているわけで、どこかのタイミングで「自我の意識」が芽生えるということも、決して起こりえないことではないような気もしてきます。

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そういったCGやSF的要素の面だけでなく、ストーリー的な面においても、決して目新しさや意外性は少ないものの、エンターテイメント映画として見るならば、なかなか悪くはないデキだと思います。
ただ、上映時間のせいでカットされたシーンでもあるのか、どうも説明不足な部分が目立ち、どうしてもスッキリしない部分も見受けられます。

・水死した少女とスプーナーの関係(少女の名前の首輪もらうほど...?)
・スプーナーとラニング博士の関係(左手のロボット化はどのように...?)
・コンピュータVIKIとUSR会長の関係(なんで会長は殺されたの...?)

これらは物語の根幹になっているので、やはりしっかり観客に納得させられるような作り方をして欲しかったと感じます。

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それはそうと、劇中で中心となるロボット「サニー」を指して「ユニーク」という単語による表現が頻繁に使用されます。
IT系の仕事をしているGaiは、当然本来の意味である「特別な」とか「一つしかない」という意味として理解していたのですが、見る人の中には単純に「面白い」「可笑しい」という間違った意味で受け取ってしまう人もいたようです。
これからご覧になる方は、その点にも注意しましょう。

色々書きましたが結論としては、「本格SF」としてではなく「娯楽作品」として見るならば、決して見て損は無い映画、というのが感想です。
アクションとCGを楽しみながら、ちょっと先の未来に思いを馳せてみるというのも良いのではないでしょうか。

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コメント

ちょっと、本題から脱線するのだが・・・

>ロバート・A・ハインライン・・・

実は、私も大ファンで一部の作品(短編集等)以外はハヤカワ文庫をほとんど持っているのだ。

まぁ、正確に言うと【原作:ハインライン+翻訳:矢野徹】の組み合わせの大ファンってことなんだけど・・・
この二人、親友関係でもあり、翻訳の際も原作者の意見を十分取り入れかつ雰囲気を壊さずに訳された多くの作品は、何度読み返しても面白いのだ。

特に、印象に残っている作品は、「月は無慈悲な夜の女王」なのだ。
この作品を是非映像化してほしいなぁ~

投稿: はんぎょどん | 2004.10.04 11:30 午前

「月は無慈悲な夜の女王」はイイですねぇ。

地球の支配を受ける月植民地の住人の独立戦争を描く作品だったと思いますが、確かあの作品にも「意識を持ったコンピューター」が出てきますね。

月社会の組織の作られ方や、アメリカ開拓時代の雰囲気の生き生きとした描写、地球への攻撃方法などの意外性なども、とても面白かった印象が残っています。

古い作品だけど、きっと今の時代にも通じるものがあるような気がしますね。

投稿: G | 2004.10.04 04:08 午後

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