« 「R.O.S.E. Online」オープンβテスト・レビュー | トップページ | 人はなぜ戦うのか?  ~DVD「CASSHERN」 »

2004.10.20

酷すぎる・・・ ~映画「デビルマン」

衝撃的だった。
酷すぎる・・・

この映画に期待している方、これから見に行く予定の方は、そしてこの映画を見て「面白かった」という感想を持っている方は、このエントリーを読まないで下さい。

devil11.JPG

「デビルマン」の実写映画化は、確かに難しい事だと思う。
数ヶ月前、それに挑戦しようとしていると知った時、心からエールを送りたい気持ちになった。
そして、日本の映画界も、ようやくここまで来たんだなぁと感慨深くも思った。

少しずつ公開され始めた「デビルマン」や「シレーヌ」の造型や、CGを用いた変身シーン、都市の上空で展開される戦闘シーンなどに心が躍った。
公開延期も、良いものができるのならばと苦にならなかった。

 
ただ、棒読みのようなセリフを放つ、原作のイメージと重ならない役者さんたちを予告編で見た時、一抹の不安を感じたのも事実。
しかし、ここまで酷い映画になってしまっているとは・・・
怒りを通り越して、悲しささえ感じる。

企画・キャスティング・脚本・演出・演技・撮影・照明・編集・音楽のすべてに深刻な問題を抱えた作品ではないだろうか。
何があったかは知らない。
だけど、どうしてこんな映画になったんだ??

devil12.JPG

具体的に醜いポイントをあげるとキリがないが、誰の目にも明らかなのは「主演の二人の演技の下手さ」だろう。
原作のイメージうんぬん以前に、棒読みで感情表現に乏しく、重要なポイントである苦悩とか葛藤といった要素が全く伝わってこない。

特に台詞の稚拙さは酷いものだ。
作品に入り込めなかったのは何よりも台詞のせいだと思う。

中心人物たちの台詞だけではない、了の父が語る冒頭のデーモンを説明するシーンなどは全く子供向け番組のイメージだ。
家族団欒のシーンも酷い。
他人の集まりみたいな上滑りの台詞に思いっきり引いてしまう。

この作品は子供向け作品ではないのだから、もっと大人の鑑賞に堪えうる台詞回しがあったはず。
或いは脚本家にそれだけの台詞を書く力が無かったのだろうか?
台詞に限らず、そもそもなぜこの映画を作った人たちは、脚本の段階でどうしてもっとしっかり考えなかったのだろうか?

だいたいオープニングが学園ドラマ風なところが、映画化するなら違うだろうと。
コミックじゃないんだから。
オープニングは極地での「氷漬けの悪魔」を期待したんだが・・・。

そもそも「デーモン」の設定を変えてしまっているところが間違いか?
だから、何にでも融合合体できるデーモン一族が唯一「理性」をもって行動する人間の「精神」を苦手とするという設定も消えてしまっている。
この点が後々の矛盾も生んでしまい、テーマの欠落にまで繋がってしまっているように思う。

デーモンと合体しやすくする為に、あえて普段から動物的な衝動で動いている不良を集め、ドラッグパーティーをさせている地下室。
そこに不動明を放り込み、デーモンを召還する。
万一不動明が精神を乗っ取られずにデビルマンになったとしても、周りはデーモンだらけ。
周囲のデーモンを全部倒さないと生き残れない。

そういった緊張感のある導入部は、映画では全く出てこない。
なぜ、明がアモンに心を乗っ取られず、逆にデビルマンになれたのかの説明は全く無く、デビルマンになった直後に悩むことも葛藤することも無くデーモンとの戦いを決意してしまうという短絡さ。

そのストーリーの短絡さに、役者の演技の稚拙さが拍車をかけ、とにかく最初の15分で幻滅してしまった。

アイドルたちの演技力を問題にするのは間違いなのかもしれない。
所詮、彼らは現段階では「役者」と呼べるレベルには至ってはいないのだから。
だとするならば、これはあきらかに演出サイドの責任なのだろう。
いや、彼らを押し付けられた監督もまた、不幸だったのだろうか?

原作ファンの数だけでは観客動員数を稼げないから、アイドルを起用?
色々なところで事前に取り上げて欲しいから、ボブサップや小錦、小林幸子?
とにかくタレントたちが、本編とは全く意味もなく出てくるあたりは、もう怒りを通り越して情けなくなる。

ちなみにどこかのサイトの書き込みで見かけたけど、原作のキーポイントの一つとして「サタン=了」が「両性具有」という設定があるが、了の役をした双子の片方が、変身時に胸がつくのは嫌だと駄々をこねて変更になったそうだ・・・。
役者が嫌だと言ったら変わる脚本っていったい・・・・。

監督のせいだけでも脚本のせいだけでもなく、役者や映画会社も含めて、作り手たち全てが何か勘違いして作ってしまった作品。
もはや原作がどうのこうのではなく、日本の映画システムの悪い部分、悪い体質がもろに出してしまった作品のように感じる。

キャストの中で唯一の救いはススム君の演技の素晴らしさだ。
あの子が出て来ると画面が締まる。
やはりちゃんとオーディションで勝ち抜いて役を勝ち取った者は、年少でも気迫が違う。

他にも「頑張り」を感じられる部分はある。
賛否両論ありそうだけど、CGはかなり頑張っていると思う。
少なくとも「挑戦」が感じられる。

devil13.JPG

特に一枚絵としての出来はなかなか素晴らしいと思う。
ただ、動き出したとたんに、その魅力が半減してしまう。
これは、作り手がアクションというものを知らないせいだと思う。
しかしそれでも、原作ではきちんと描けなかったサタンとデビルマンとの対決シーンをしっかり描こうとしていた。

ただただ残念なのは、これはCG班の責任ではないのだが、本編との絡みの中での効果的な使われ方がされていない点・・・
本当に残念だ。

また、R12を受けてでも、あの残虐な牧村家の襲撃シーン、ミキが首だけになるシーンを描いた点も、その頑張りを評価したい。
しかしこれもまた、残念な結果に終っている。
原作もそうだが、メッセージがあるから耐えられるというか心に響く。
ところがこの映画では訴えるものが何もないから、暴力だけが先行して見ていて気分が悪くなる。
本来、原作ではどこか美しささえ感じた明がミキの首を抱くシーンが、気持ち悪さしか伝わって来ない。

devil14.JPG

それらのシーンだけに限らず、原作のエピソードをできるだけ多く盛り込もうとしている努力は伺える。
しかし「忠実な再現」には程遠く、文字通りつまみ食い、食い散らかしにしかなっていない。
これでは原作を読んでいない人には、そのシーンやエピソードが持つ深い意味などは、到底わからないだろう。
「原作に忠実」であろうとはしているが、「原作の世界を映画として表現できていない」のだと思う。

こんなレベルでは、よほどOVAのデビルマン・誕生編・妖鳥死麗濡編をそのまま実写にした方がマシだったのではないかと、つくづく思ってしまう。

シレーヌが出る以上、あの神々しい最後は絶対になければならない。
それにデビルマン・デーモンの存在を「研究所」で調べるエピソードも。
人間の魔の心がデーモンを生んだとする場面や、激しいデビルマン族、デーモン族の戦い。
これらが無いと、人類が疑心暗鬼になり自滅する説明、最後の「この世の終わり」に話が続かないし、そのエンディングの意味が無い。

この映画では「人類」、「デビルマン」、「サタン」の三つ巴の戦いが、ちゃちな「家族愛」、中途半端な「友情」になってしまっている。
だから「デビルマン」ではなくなってしまっているのだと思う。

devil15.JPG

様々苦言を書いてきたが、やはり最大の失敗は「テーマ」を描けなかったことだろう。

親が子供を殺す、無差別の殺人、表層的かもしれないが仲の良い友達や、わかりあえる仲のはずの親子が「キレた」だけで人を殺す・・・
こういった事件は原作「デビルマン」が発表された当時は殆ど無かったと思う。

しかし現代では、どんどんそうした事件が増えている。
だからこそ、この「デビルマン」が持つテーマというのは、描き方によってはとても現代において重要な、また警鐘を投げかけるに足るテーマだと思う。

「デビルマン」という漫画作品は、その思想的な深さ、大きさから、原作者自身にも描ききれていない部分があると、個人的には思っている。
だからこそ読者の想像力にまかされた部分も多々あり、それが故に「名作」「傑作」と評されている面があると思う。

「デビルマン」の実写映画化が難しかったのは、決して「悪魔」や残虐シーンを実写映像で見せることや「ハルマゲドン」、「カタストロフ」を映像化することだけが難しかったわけではなく、そういったテーマを描き、映画の中での解釈や一つの答えを描くこと、原作ファンを納得させる作品を作ること自体が難しかったのだろうと思う。

CGという技術が進歩しただけで、実写映画化できると判断した作り手たちの甘さが失敗を招いたという見方もでき、そういう意味を作り手たちが理解してくれて、今後の指針としてくれたたならば、この作品も決して無駄にはならないかもしれない。

それに、必ずしもイメージどおりではなかったとしても、夢にまで見たシレーヌやジンメン、デビルマンやサタンが、アニメではなく実写で動いただけでも、ある意味感動ではある。

願わくばいつの日か、別の監督、別のキャストで、もう一度実写「デビルマン」を見たいと思う。
がんばれ、日本映画界!

|

« 「R.O.S.E. Online」オープンβテスト・レビュー | トップページ | 人はなぜ戦うのか?  ~DVD「CASSHERN」 »

コメント

うーん、思わずウナッてしまったのだ。

今回は、長女と観に行けなくて残念に思っていたが・・・
Gai さんの感想を読んで「観なくて良かった」と思ったのだ。

「原作のテーマ」を生かしきれていない・・・

私の世代でも「原作=アニメ」が大多数だが、「アニメ=漫画(コミック)」では無いことを知っている人は結構少ないのも現実なのだ。

今回の実写版は、そのアニメと漫画を融合させるつもりが、多くの面で消化不良を起こしてしまったのだろうと推測するのだ。
当然、俳優さん達やスタッフ&監督の技量にもよるが・・・

ついこの間の実写版「サンダーバード」と同じ部類かな???

これなら、実写版「キャシャーン」のほうがどれだけ優れているか、と思ってみたりするが比較するものではないかな・・・

さて、次回の実写版「鉄人28号」は、どのような作品になるのか・・・

投稿: はんぎょどん | 2004.10.20 12:17 午後

実写版「サンダーバード」は、話全体が「子供向け」に作られていたので、大人の目から見ると物足りない印象が残ってしまったけれど、それでも「子供と一緒に見てもらって大人たちにも懐かしんでほしい」という作り手たちの思いはしっかり貫かれていて伝わってきました。

実写版「キャシャーン」は、荒唐無稽なアニメを原作としながらも、その原作の内容にとらわれ過ぎる事無く、全編を貫く映像美と見事な役者たちの演技で「一つの世界」を表現してみせていたと思います。

しかしこの「デビルマン」は・・・
どういう人に見てほしかったのか、何を伝えたかったのかさっぱりわかりませんTT

何かを伝えたいと思っている、伝えようとしている姿勢は感じられるんですが、どのシーンも中途半端に終っているという印象です。

映画を見てとは薦められないけど、ビデオでもレンタルされるようになったら、ぜひその酷さを確認して下さい。
ある意味歴史に残る失敗作という意味で、一見の価値があるかもしれません^^;

投稿: Gai | 2004.10.22 12:48 午前

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/2647/1726200

この記事へのトラックバック一覧です: 酷すぎる・・・ ~映画「デビルマン」:

» [特集][映画]デビルマン見てきました。(注意・ネタバレありあり) [本と映画DVDの紹介サイト]
今日はやっと見てきました。映画館着いた時ガラガラでした。後でちらほら来たが、オレの斜め後ろ座ったジジイ!!うるせえ!「ちっちっちっち」って常に舌鳴らして、更に「... [続きを読む]

受信: 2004.10.20 03:40 午後

» 【妄想Q&A】実写版デビルマンって面白いんですか? [妄想Q&A]
Q:観に行こうかと思ってますがどう? A:映画鑑賞は自己責任で。  制作費10億 [続きを読む]

受信: 2004.10.21 01:52 午前

» 海賊、日本橋を渡る [二次元二丁目、トイレの落書き]
弟 「ニーチャン、映画でデビルマン見てきたよ。」 兄 「ナカナカの評価だからオレも見たサ、この前、日本橋歩いていたら、「激安、千円」って言って、女の子が路上で... [続きを読む]

受信: 2004.11.01 12:36 午前

« 「R.O.S.E. Online」オープンβテスト・レビュー | トップページ | 人はなぜ戦うのか?  ~DVD「CASSHERN」 »