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2005.01.31

チャン・イーモウ監督渾身の武侠映画 ~DVD「LOVERS」

映画「LOVERS」は、公開時に見た後の感想、 戻るさ、君のためなら・・・ ~映画「LOVERS」で書いた通り、騙し騙されの凝ったストーリー展開、美しい映像、そしてチャン・ツィイーの見事な踊りとアクションが印象に残った映画で、DVDで改めて見るのを楽しみにしていた作品です。

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今回はストーリーも、また主役となる三人のそれぞれの正体や背景もわかっているので、その上で彼ら一人一人の演技やアクションを見ることになり、また違った意味で味わい深く楽しむことが出来ました。

 
とにかく素晴らしいと感じるのは「色」に関してです。
映画「HERO」でも、ワダ・ミエさんの衣装を主体に、単色をアレンジした美しさが印象的でしたが、この「LAVERS」では「色」と「柄」、そして「背景」のマッチングの妙が、映画全体の美しさを演出していると感じます。

牡丹坊でのシーンはまさに「絢爛」という言葉がぴったり当てはまる出来映えですし、野外のシーンでは、例えば森の紅葉をバックに金城君の青、チャン・ツィイーの緑の美しさなど、とにかくため息が出るようなシーンが多く、ラブ・ストーリーに「色」はとても重用なのだということを改めて感じさせられます。

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またチャン・ツィイーの踊りとアクションに関しては、全く何度見ても惚れ惚れとさせられます。
踊りのシーンでポーズを決めた後の、かすかな不敵な笑み、たまりません。

チャン・ツィイーは全編を通して美しいのですが、今回改めて見直してみて、特にチャン・ツィイーが盲目を演じている前半が、また違った意味での美しさを出しているなと感じました。

それぞれ二人の男性と対峙しても、彼らと目が合うことなく目線があらぬ方向に向いたままでの演技は、そのシーン全体にどことなく不思議な空間を感じさせられますし、またアクションの際にも、耳で敵の方向を追うしぐさには「座頭市」が戦う際と同質の、独特の魅力や緊張感を感じます。
そうした不思議な演出効果が、チャン・ツィイーの美しさを更に引き立てているように感じられました。

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そしてストーリーの仕掛けがわかっているからこそ、チャン・ツィイーをはじめ、男性陣一人一人の前半の演技も、当初見たときとはまた違った角度で見ることが出来る面白さもありました。

どの時点で金城君とチャン・ツィイーはお互いに惹かれ合ってしまったのかとか、アンディ・ラウのこの時点での真意や思いはどういうものだったのかという事を意識しながら見てみると、それぞれの演技が一層深みを持って感じられます。

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前回の感想にも書いたとおり難点もいくつかある映画ではあるものの、DVDで改めてじっくり見る事ができて大満足。
しかし、残念なのは「特典DISK」の内容のショボさです。

メイキングや撮影シーン、ジャパンプレミアの様子などが収められているのですが、特に「メイキング」は非常に薄っぺらな内容となっています。

実はGaiは、公開時に映画を見た後、「LOVERS 外伝」というメイキングDVDを購入して見ていました。
そこにはこの映画が、いかに苦労の末に産み落とされたかが、実に克明に記録されていました。

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今回のDVDの特典DISKに収められているメイキングにも「突然の雪に苦労させられた、ケガに苦労した」ということが多少は語られていますが、実際はそんな程度のものではなく、まさに祟られているとしか言えないくらい、不運とトラブル続きの制作過程だったのです。

「LOVERS」の脚本作りは「HERO」のクランクアップ直後、つまり公開前から始められました。
監督のチャン・イーモウは自分のことを「中国で最高の監督とは言えないが、最も働き者の監督」と言っている通り、全く休む間もなく映画作りに携わっているようです。

その脚本作りはとにかく難航。
取り組んでいるさなかに「HERO」の成功が伝えられるのですが、監督は「HEROのような豪華キャストは二度と揃えられない、撮影の規模もアレが最高だ。今度は内容で勝負だ。」とLOVERSに関する意気込みを語ります。

しかし、脚本は遅々として進まず、途中監督も様々な人に意見を聞くのですが、ありきたりな話だ、深みがないと全否定されるばかり。
クランクインの前日になってもまだ書き直している有様で、脚本の製本も出来ないという異例の事態だったそうです。

監督はスタッフたちに語ります。

「完璧な映画など無い、人を「おや」と思わせるアイデアとセンスだ。」
「最後の一分間を見ないと理解できない、最後まで見ないと前半の意図が明らかにならない。」

映画「LOVERS」を全編通して見終わっている今、この監督の思いが良くわかります。

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クランクインしてからも不運は続きます。

この映画のクランクインはウクライナでのロケからスタートしました。
本編では、白い小さな花が一面に咲いている野原で、金城君が駆ける馬上から花を摘んで、チャン・ツィイーに渡してあげるシーンが、この映画がクランクインして最初に撮影されたシーンでした。

本来、あのシーンの脚本には「色とりどりの花が一面に咲き、大海原のように揺れている」と書かれていたそうです。

ところが本編で見られるそのシーンは、たしかに雄大な感じはするものの、決して「色とりどりの花」などは無く、他のシーンのような色遣いの妙もあまり感じさせられません。

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実はウクライナにまで事前に足を運び、場所を確保して種まで植えて手配していた「花畑」が、現地の管理を委託した会社の不手際もあって、予定通りに成長してくれなかったのでした。

過去に似たような経験を持つ監督は、事前に何度もその危惧を訴えスタッフに念を押すのですが、結局その危惧が当たってしまう結果となったのです。

監督ももうダメだ、と諦めかけた宿舎への帰り道、幸運にも本編で使用されたあの野原を見つけ、どうにかあのシーンを撮り上げる事ができたのでした。

とはいえ、当初イメージした映像にはほど遠く、「馬上から花を摘む、美しいシーンになるはずだった・・・」「花が撮りたかったんだ・・・」と何度もつぶやく寂しそうな監督の表情が印象的でした。

「雪」にまつわるエピソードも悲痛な状況でした。

それまでも突然の天候の変化に、ウクライナでの撮影は難航を極めていましたが、遂にどうしようもないくらいに雪が降り積もってしまい、本来は「色鮮やかな花畑の中での決闘」がラストシーンとなるはずだったのが、既に撮った秋のシーンと繋げられない状況になってしまいました。

結局、舞台を雪のシーンに変える苦肉の策を取ることになったのですが、監督自身も「終わりかと思ったが、神様が与えてくれた雪」と語っているとおり、これが見事な演出効果を出す結果になりました。

本編では、確かに急激な天候の変化に違和感を感じるものの、横殴りに吹き付ける雪の中での決闘シーン、真っ白い雪の上に落ちる真っ赤な血など、映像という点では雪だからこその演出となっていることがわかります。

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この「雪」に関しては唯一災いが功を奏した結果となりましたが、しかしそれ以外は全く不運の連続としか言えない事故が続きました。

幸い、こめかみを縫う程度で済んだものの、撮影中に金城君の放った矢がスタッフの顔面に当たったり、チャン・ツィイーも殺陣中に刀が額に当たり、ヒヤリとさせられたり。

金城君にいたっては撮影中に落馬して足を負傷。
本編ではさっそうと馬を乗りこなしているように見えましたが、実は金城君は、この作品まで乗馬の経験がなかったのだそうです。
1週間の練習であそこまで乗りこなせるようになったのですから、改めて運動神経の良さと映画に対する情熱に感心させられました。

負傷後も牡丹坊、竹林と、金城君は完治しない足の状態で撮影に望んでいました。
牡丹坊での金城君は、酔っているという設定で、立ち芝居がなく、だらしなく足を伸ばした状態での演技でしたが、あのシーンは単に酔っているからというだけではなく、足を曲げられない状態だったというワケです。

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そんな風に事故続きの撮影が続いたわけですが、究極は何といってもアニタ・ムイの突然の死でしょう。

反乱軍の頭目、チャン・ツィイーの母親役として出演が決まっていたアニタ・ムイは、クランクイン前に入院、当時の週刊誌等では「キャスト変更」も噂される中、監督はアニタ・ムイを元気づける意味も含めて、彼女の回復を信じて退院を待っていました。

ワダミエさんに、アニタ・ムイの衣装は、病気の彼女への配慮ができるよう、厚手の生地にしてくれと監督が頼んでいたというのが印象的でした。

監督は「彼女は自分が病気と知っていて、この映画に出たいと言ってくれた。主役でもないのにどうしてそこまでこだわるのか?それは私を信じているからだ。その期待に応えたい。」と語り、「キャスト変更は絶対にない」と明言します。

しかしその願いも空しく、遂に危篤の報がウクライナに届きます。
ジャッキー・チェン、トニー・レオンも撮影を中断して見舞いに駆けつけていると。
画面に映る監督やスタッフ達の悲痛な表情から、その思いが伝わってきました。

残念ながらアニタ・ムイは41歳という若さでこの世を去りましたが、本編を見るとわかる通り、監督は最後まで代役を立てずに脚本を修正、そしてこの映画をアニタムイに捧げたのでした。

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こうした苦労の数々は、今回のDVDの特典DISKに収められているメイキングでは残念ながらほとんど語られていません。
もし今回のこの「LOVERS」を見て気に入った人は、是非「LOVERS 外伝」をご覧になることをお勧めします。

監督が、この「LOVERS 外伝」の中で語っていた言葉が強く印象に残りました。

映画の魅力って何かな?
こんなに妥協を強いられ、それでも引きつけられる魅力は?
大変だから面白いんだ。

「HERO」も「LOVERS」も、ある意味では習作だ。
二つの作品で武侠を勉強している。
いつか本当の素晴らしい武侠映画を撮りたい。

そして監督は、「LOVERS」のクランクアップと同時に、すぐに次の映画の脚本作りを始めていました。

Gaiもまた、チャン・イーモウ監督の「本当の素晴らしい武侠映画」を見せてもらえる日が来るのを、楽しみに待ちたいと思います。

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コメント

こんにちは、清水と申します。昨夜(10/30)のテレビ朝日で放映された「LOVERS」を見た後貴方のブログを見つけ読んだ者です。私のブログにチャン・ツィイーの踊りのシーンと竹林シーンの2枚の写真を使わせて頂いても良いでしょうか?お返事頂きたくお願いまで。

投稿: 清水道子 | 2005.10.31 12:35 午後

清水さん、はじめまして。

ここで使用している画像は、元々公式サイトのギャラリーから持ってきたものなので特に構いませんですよ。

良ければ今度、清水さんのブログのURLも教えて下さい。

でわでわ。

投稿: Gai | 2005.10.31 01:09 午後

こんばんは、「やまびこ」さんとしてyahooブログをこの夏から始めた新米です。絵を書くブログにしたかったのですが、「ペイント」の勉強不足でなかなか作品が出来ません。そこで何でも手当たり次第(ウフフフ)カキコしてます。どうぞ、訪問して下さると嬉しいです。有り難うございました。まずはお礼とURLでした。草々

投稿: 清水 | 2005.10.31 06:31 午後

清水さん、早速URLをありがとうございました。

メールでご連絡頂いた際にトラックバックもさせて頂きました。

こちらは最近は殆ど更新しておりませんが、今後ともヨロシクお願いします。

投稿: Gai | 2005.10.31 07:59 午後

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発売されてすぐに手に入れた映画「LOVERS」のDVD。けど、まだ見ていない。 [続きを読む]

受信: 2005.02.17 01:09 午前

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